オンデマンド配信で機会喪失がゼロに。JTB法人事業流・動画マーケティング術
株式会社 JTB
ビジネスソリューション事業本部 マーケティング担当マネージャー 前澤 美保様
ビジネスソリューション事業本部 マーケティング担当マネージャー 森 淳様
事業内容
日本国内や欧米諸国を中心に交流創造事業を展開する、JTBグループの法人事業統括部門。 旅行だけに留まらず、組織の課題解決をサポートする法人事業を複合的に展開している。企業、自治体、学校に対して研修、旅行、ITなど企業資産を生かしたBtoBソリューションを提供。
ミッション
法人(産官学)のお客様の課題解決に寄り添い、お客様の事業の成長・社会課題の解決に貢献することを目指すJTBの法人事業において、お客様毎の購買プロセスに適応したマーケティング活動を実行すること。
導入前の課題
- 収録動画を配信するパターンの場合、都度発注をしておりパフォーマンスが決して良くなかった。
- 参加できないお客様に対してオンデマンド配信ができていなかった。
- 複数登壇者がいる場合に音声や回線のトラブルが発生しがちだった。
- 視聴データが分断していてアナログでの突合せが必要だった。
導入効果
-
ライブ配信を
アーカイブ機会喪失はゼロに
-
2021年実施の全セミナーのうち
オンデマンド配信の割合7割以上(11本)
-
Webセミナーの
運営コストやリソース3割減
企業、自治体、学校etc。あらゆる法人の課題を解決
創業から110年、旅行や交流を創出するビジネスを展開してきたJTB。JTBといえば旅行のイメージが強いが、あらゆる法人の課題解決に寄り添うビジネスパートナーの顔も持っている。
さまざまな交流や場を創出することで培ってきたノウハウや、旅行を起点につながった全国各地の企業や学校、教育団体、自治体などのネットワークを生かし、法人の事業成長や社会課題解決に貢献しているのだ。
たとえば、企業の絆を深める社員旅行や学生の修学旅行はもちろん、従業員や顧客向けイベント、健康経営支援、DX、プロモーション、インバウンド、地域活性、地域産業支援など提供するサービスやソリューションは多岐にわたる。
【企業向けソリューション】
「法人事業では、JTBグループが培ってきた強みを生かして、交流を創出することで法人の事業成長を実現し、人と人、組織と組織をつなぐことで社会課題の解決を目指しています。お客様の業界業種はさまざまですし、提供するソリューションも幅広いのが特徴です。」(ビジネスソリューション事業本部・前澤美保氏)
具体的に、どのような課題に対して、どのようなソリューションを提案しているのか。前澤氏によると、たとえば企業から「従業員満足度を高めたい」といったお題をいただくと、組織の状態を調査した上で、エンゲージメントを高めるイベントや、チームビルディングのための研修などを実施するという。
「交流」「つなぐ」「コミュニケーション」をテーマにさまざまな取り組みができるため、たとえば全国47都道府県にある学校とのネットワークを生かし、企業と一緒に学校向けプロジェクトを開発することも可能。グループの強みをワンストップで提供することで、組織の中、組織と他の組織、組織と社会を結びつけて課題解決につなげているのだ。
「このソリューションビジネスは20年以上の歴史がありますし、JTB自体も110年の間、人を感動させたり、心を動かしたり、おもてなしをしてきた歴史があります。それらの膨大な知見やノウハウが、法人サービスのアウトプットにつながっていますし、修学旅行のマーケットシェアが非常に高いことや、全国の自治体や観光協会、教育関係の団体とパイプがあるのは、我々の大きな強みです。」(前澤氏)
Webセミナーをアーカイブしたい。グループ会社横断で1ROLLを導入
順調に法人サービスを拡大していたJTBだが、2020年から世界的に猛威を振るったCOVID-19により、事業環境は大きく変化した。リアルの場や交流の創出ができなくなり、一気に需要を失ったのだ。
「リアルの場で案件を遂行することができなくなり、お客様との接点を作るきっかけもなくなってしまいました。」(ビジネスソリューション事業本部・森 淳氏)
しかし、JTBはそういったビジネス環境の変化に耐えられるだけのデジタル基盤を作っていた。基盤整備が終盤に差し掛かったタイミングでコロナの感染拡大が始まり、JTBのデジタル化は一気に加速した。そこでまず取り組んだのが、Webセミナーの企画・配信だ。
「2020年5月に最初のWebセミナーを配信すると、とても良い反応を得られました。営業からもお客様にご案内しやすい、接点を持ちやすいと好評だったため、2020年度はWebセミナーの企画・配信に注力しました。ただ、グループ全体で運営方法や配信の仕方、配信ツールなどが定まっておらず、その都度ツールを決めていく状態だったので、効率の悪さとコンテンツをストックできないことが課題でした。」(前澤氏)
早いタイミングからオンラインのWebセミナーをスタートさせたものの、運営方法の解を得られていなかった同社。そのため、時間や工数、コストをかけて作ったWebセミナーも、1回限りのライブ配信で終わってしまうことがほとんどだった。
「当時、私はJTBのグループ会社に属し、同じように毎月3〜4本のWebセミナーを開催していました。1本60分のセミナーを作るのは大変な労力が必要ですが、ライブ配信をアーカイブできるツールがなく、その場限りで終わってしまうのが勿体無いと思っていました。」(森氏)
2020年度の1年間でノウハウを蓄積した同社は、Webセミナーの配信方法は「ライブ配信」だけでなく、「収録動画の収録型ライブ配信」と「オンデマンド配信」の3パターンを駆使するのが効果的だと気づく。この3つの配信ができて、データを一か所に集約できるツールを検討し始めたところ、紹介されたのが1ROLLだった。
グループでたくさんのWebセミナーを実施していたが、全ての取り組みが“点”の状態だった。
1ROLLはセールスフォースとデータ連携ができるので、セールスフォースを見れば1ROLLでのセミナー動画の視聴状況がわかります。視聴状況を簡単に可視化できると、インサイドセールスや営業の活動の効率化や最適化につながりますし、組織全体の強みになると思いました。
運営コストが大幅減。オンデマンド配信で見逃しもゼロに
JTBでは、1ROLL等を活用して「ライブ配信」と「収録型ライブ配信」、「オンデマンド配信」の3つの配信パターンを確立させている。導入後の一番の変化は、ライブ配信を見逃した人もアーカイブしたオンデマンド配信を視聴できるようになったこと。
「コンテンツとして動画がストックされているので、インサイドセールスや営業からも、お客様に動画を提案しやすくなったと喜ばれています。」(前澤氏)
現在、オンデマンド配信をしているセミナー動画は、全体の8割にあたる10本だ。2020年度に実施したWebセミナーを1つもストックできなかったことを考えれば、10本の動画をストックできたことは大きな成果だと言える。反響のあった動画を、同業界の別の顧客に提案するなど、オンデマンドから創出できている効果も多いという。
「以前は、その日・その時間にお客様のスケジュールが合わないから、もう一度配信してほしいといった要望が営業から多く上がっていました。」(森氏)
1ROLL導入後はその問い合わせがゼロになり、機会損失もゼロに近づいたと思います。現在は、コンテンツが手元にあればお客様のニーズに応えやすくなるから、Webセミナーをもっと増やしてほしいという声を多くいただいています。
また、収録型ライブ配信ができるようになったことで、運営側の負担を大きく減少させることにもつながったという。
「今までライブ配信をする際は、登壇者のスケジュール調整や通信環境の調整が必要で、それに多くの時間とコストをかけていました。でも今は、登壇者の都合の良い日時に事前収録したものを1ROLLで簡単に編集して擬似ライブとして配信できるので、スケジュール調整の必要がなくなりました。それだけでも運営側の工数は大きく減っています。」(前澤氏)
運営側の負担減少はそれだけではない。さまざまなツールを使ってWebセミナーを配信していた頃は、配信時に「音が聞こえない」といったトラブルが多かったそうだ。それが、1ROLLを導入後は試聴に関するトラブルが皆無になり、配信時間に対応する必要もなくなった。
データドリブンな営業・マーケティング活動を目指して
コロナ禍でいち早くWebセミナー配信に取り組み、その知見やノウハウを蓄積してきたJTB。Webセミナーは理解促進を目的とした内容が多いため、今後は広く興味を持ってもらうための短い動画を1ROLLで作成するなど、動画マーケティングに注力していくという。
「たとえば、JTBは良くも悪くも「旅行」のイメージが強く、それ以外の事業の存在を伝えるのが難しいという課題があります。そもそも、「旅行会社のセミナーには興味がない」と言われてしまえば、Webセミナーを視聴するというアクションにつなげることが難しい。そこで現場から上がってきたのが、「自分たちの事業を端的に説明できる動画を作ってほしい」という要望でした。」(前澤氏)
現在、この要望を受けて事業の多様性を瞬時に伝えられるCM風の動画やショートムービーの制作に取り掛かっているというが、これはマーケティングチームの取り組みが動画の有効性を全社に広めた結果と言えるだろう。
一方で、新たな課題も出てきた。
「課題はデータを分析・活用しきれていないことです。とはいえ、データ分析は着実に進めており、どのパターンからの商談化率が高いのかは、ある程度の傾向が見えてきました。セミナーの内容に関しても、認知・理解・商品理解という3つのカテゴリに分けて、認知の動画は試聴数が多く商談化率が低い・商品理解の動画は試聴数が少なくても商談化率が高いといった傾向もわかりました。ただ、まだ十分とは言えないので、今後はあらゆる視聴データを分析し、営業やマーケティング活動への有効活用を目指したいです。」(前澤氏)
前澤氏は、お客様のオンラインでの行動や、業界傾向、特定のマーケットが反応する動画などを分析し、マーケティング施策に生かすことに加え、データ分析によって見えてきた傾向を営業にフィードバックすることで、営業活動のアップデートも目指したいと語る。
リアルの場や交流の創出を得意とする同社で、データドリブンな営業・マーケティング活動が当たり前になれば、社会へより多くの価値を提供することになるのは間違いない。これからグループを超えた、一体でのマーケティング活動の強化も図るというから、組織全体のデジタル化とデータ活用も加速するだろう。COVID-19による社会やビジネス環境の変化に適応し、動画マーケティングを一気に浸透させたJTB。今後どのように進化し続けるのか、期待したい。
- 社名
- 株式会社 JTB
- 事業内容
- サービス業
- 設立
- 1963年11月12日(創立年月日 1912年3月12日)
- 従業員数
- 19,510名(グループ全体 2022年3月31日現在
- URL
- https://www.jtbbwt.com/ tabs (法人サービスサイト)